【オット小話】 冬の日射取得を考える ⑤得か損か・結論
光シリーズももう何回目なのでしょう。
ようやく終わりが見えてきました。
いよいよメインの計算、冬の日射取得です。
■各方角の1か月の日射取得(kW/㎡・月)を出す
例:稚内市、1月のAPW430クリア(日射取得型)
日射熱取得率(η値)0.57
U値0.94W/㎡
南面・1カ月の予想日射取得467W(1日)
K値27.5(平均気温-4.5度)
COP2.54
以上のケースの場合の計算は次の通り。
熱取得
413.63W(日射取得1日) × 0.57(η値)×30.4= 7167.38W/㎡(月)
7167.38 ÷ 1000(KW換算)= 7.167KW(月)
熱損失
U値0.94W/㎡(毎時)×24(時間)×30.4(日)= 685.824W/㎡(月)
685.824 × 27.7(K)÷ 1000(KW換算)=18.86kW/㎡(月)
熱収支(電気代換算)
7.167-18.86= -11.693KW ÷ 2.54(COP)=-4.604KW
-4.604KW × 28(電気代)= -128.9円
このような流れになります。
次の表の左上ですね。
他の3種はこのようになりました。
東窓も同じ手法で計算します。表ばかり並べても見辛いですから、割愛しますね。
■電気代節約分の回収率を算出する
それでは、いよいよまとめです。
サステイナブルなゼロエネルギーハウス(言ってみたいだけ)を、
無謀にもUA値0.4で目指してみます。
本家なら間違いなくUA値0.2以下で設計するでしょうが、なんちゃってパッシブですからね。イケイケで行ってみましょう。
さて、作ってみたサンプルハウスですが、窓の大きさは次のようになっています。
南窓 合計面積 4.3㎡
東窓 合計面積 2.5㎡
西窓 合計面積 0.84㎡
今回の条件の窓を再掲します。
まずは、年間に冷暖房費がどのくらいかかりそうかを、グラフでどうぞ。
目標温度、23℃設定ですからどの都市も結構暖房費が必要です。
反対に冷房はそこまでになっていますが、これは平均温度での算出だからでしょうか。
最高温度を考慮すると、もう少し高くなるはずです。
削減できた暖房費予想です。遮蔽ブルーを除き、他は大体似たような数字になっています。
南面の窓はトリプルではなく、ペアガラス(取得型)にするのがいい!
パッシブデザインでよく聞く話ですが、光が当たらないときは外に逃げるエネルギー量が大きいですからね。
私の計算では(※ここ重要)熱収支ではそこまで有利という風には出ませんでした。
個人的な意見ですが、南窓の種類に悩んだら
APW430遮蔽クリアでいいのではないかと。
日射取得が少ない場合でも、熱損失を確実に防げます。
我が家では、西面以外を430遮蔽クリアを採用しました。
※北面も西面同様の遮蔽ブルーにすべきかと思ったのですが、見た目が青は寒く感じるかもと深く考えずにクリアを採用。勉強不足を少しだけ後悔しています。
あくまで体感ですが430遮蔽クリア、冬場の日光でも、部屋はかなり暖かく感じます。
日中で日が差せば、1月でもエアコン設定21℃で、2階は23~24.5℃まで上昇しました。
遮蔽だから日射取得できない、というわけではないと思います。
次に行きましょう。
年間の暖房費をどのくらい削減できたか、というグラフになります。
10%削減程度ではゼロエネ住宅とはどうあっても言えなさそうです。
南窓の面積が4.3㎡ではちょっと物足りないのでしょうか。
パッシブデザインで電気代削減を意識するのであれば、”設定温度を下げ窓数を増やす”。
それで理論上削減率を上げることができます。
ただし快適さとコストアップにかかわるので、決断は難しそうです。
いよいよ結論です。
パッシブデザインは日射取得が得られるから、得になるのか、それとも難しいのか。
それでは表をどうぞ!
50年とやや回収期間が長いかとは思いますが、元が取れそうな地域がいくつか見てとれますね。APW330がやはり、設置代金がお手頃なので回収が早くなるようです。
しかし、大声で「得なんですよ!」と言い切るにはちょっとインパクトが薄いです。
そこで、趣向を変えてみましょう。
インフレが年々進んで、1.5%ずつ毎年電気代が上がった場合、どうなるでしょうか。
ご覧のように、黒字幅が大きくなっております。
ということで、とり急ぎ結論です(早口)。
日射取得は、場所と窓の枚数をよく考えれば
得することは可能です!!
性能比で見ていた時には「いらない子じゃね?」と心の中で思っていたAPW330ですが、ここにきて輝きを見せてくれました。
性能よりも、価格こそが一番!
コスパ派の面目躍如ですね。
よし、儲かるかもしれないんなら、ぜひやらなきゃ損だ!
この結論を見て、そう思ったあなた。
ちょっと待ってください。
忠告します。
まだ、考えるべきことはありますよ?
日射取得って、部屋の温度を上げるんですよ。
当たり前の話ですが、そこをよく考えないと大変かも。
次回は、日射取得と、室内の温度変化を考えてみたいと思います。
■今回の反省点
パッシブデザインにする、と言いながら結論としてはもう一つ、ぱっとしないことになって自分でも残念に思っています。
やはりUA値は0.2以下。一階の窓もうまく日射取得に使うように設計しないと、金銭的に優位になるパッシブデザインはなかなか成り立たないように思いました。
また、地域の選定も大事ですね。素人が計算するには、ハードルが非常に高いと感じます。
費用対効果は自分だけが得するという意味よりも、社会全体の負担を低くするという意味合いが強いのかもしれません。
考えの発祥はドイツですし、環境を考えるヨーロッパぽい(個人の偏見です)。
今回一番悩んだ点は、算出方法の正確さです。
自己流で計算しているので、とにかく間違い、勘違いをしやすいのです。
数値が抜け落ちたり、掛ける係数を間違えたり。
あくまでもざっくりした方向を知るための計算なので、基本精度に重きを置いていないのですが、今回の結果には自分でも首をひねるばかりです。
某プロの方の計算では、北陸でも暖房期(6か月強)の日射取得が2000kW/㎡を超えていました。
私の計算では北陸(福井市)の日射取得の推測値は次のようになります。
式が複雑になりますので、表で別掲します。
暖房温度を20℃で設定した場合は
福井市で10月~4月(暖房期7か月分)の南窓日射取得の予測合計が106.0KW/㎡。
表の右下隅の数字です。
仮に必要な日射取得を2200KWとすると2200÷106.0=20.75㎡
南面に20㎡強、窓をつければ、達成は可能。
でも、1階2階で窓を各階10㎡設置は、30坪の家ではちょっと厳しいですよね。
どこかに計算の違いがありそうです。
それでは、と暖房温度を16℃設定にして再計算。
予測合計が210.2KW/㎡となりましたので、これなら10㎡ほどで可能となります。
このように基本の知識が欠けた状態での推測となっていますので、識者の方からみると鼻で笑いたくなるような計算かもしれませんね。
あっそうだ(唐突)
冬の暖房費だけでなく夏の冷房費の節約も計算に含めれば、回収率はもう少し良いものになるかもしれません。(これ以上は怖くて、ムリっす)
決して忖度しているわけではナイデスヨ、はい。
今回の一番の反省点
室内温度23℃はやりすぎだったかも。
簡単に検算してみます。
諏訪市、平均気温-1.3℃ 目標室温15℃、APW330 UA値0.2の場合
300㎡×16.3(K)×0.2(UA)=978W/㎡(毎時)×24= 23.5kW(1日)
23.5kW×30.4(日)=714.4kW(月)
COP3.21なので714.4÷3.21= 222.6kW(エアコン電気代)
222.6kW×28円=6,233円(月)
今回の私の算出
暖房予想、UA値0.4 18,569円(月)
比較で約1/3になります。
諏訪市でAPW330なら、予想軽減電気代が654円/㎡。
なので、9.5㎡で無暖房が可能、となるはずです。
南面にテラス窓16020なら3セットだから余裕余裕()
とすれば、設置48万円の窓代金は
9月~4月の暖房費1185円/㎡×9.5㎡で年11200円軽減。
6233×2.7(月)=16829円(1年)の節約暖房費で割って
42.8年で全額回収可能、という計算になります。
無暖房を設定温度15度とするあたりに、個人的には疑問を感じたりするのですが。
ところでUA値0.2にするのに幾らかか「あなたは何も言っていない、いいね?」
「アッ、ハイ」
日射取得は本当に奥深いですね。
それではまた次回。