家建てます!ブログ

滋賀県で高気密、高断熱の家を建てる記録。

【オット小話】 冬の日射取得を考える ①下準備

さあ、いよいよパッシブデザインの本領、冬の日射取得について語ってみたいと思います。


落ちてくる日光はタダなんです。

冬の暖房費はどうしても高くつきますよ。

日光で省エネルギーを考えましょう!




いい話ばっかりですよね。
で、私は、つい考えちゃうんです。


「ほんまに?」って。はい、へそ曲がりです。


省エネ、エコロジー! って聞くとステキだな、と思いますよね。


それを「投資」という切り口で考えた途端
「ほんまにそんなうまい話ってあるの?」 
そう聞きたくなっちゃうんです。



儲かる話があるけどいっちょ噛みしませんか、儲かりまっせ。

みんな知らへんけど、あそこ、落ちてる金があるんですわ。


え、やめとく? なんで拾わへんの?

あほちゃう?すぐ拾えるんでっせ?!              

                 ※脳内の勝手なイメージです


で、よくよく聞いてみたら、拾うには特殊な装置が必要で、今なら新規開発のNA〇Aの部材を使ったこちらの商品が!ってなるんやろ、知ってる。



再生エネルギーとかエコロジーとかを馬鹿にしてるのかって怒られそうなんですけど、私は意識高い方向に全力で努力できる人じゃありません。
使えるお金が少ないから、必死で考えて自分を守ってるただの小市民なんですよ。


大体、世の中のセールストークなんて、いつも「ちょっと得する話あるんだけど」って始まるやんか!!




前置きが長くなりました。今回もいつも通り割と真剣に、
パッシブデザインはどのくらい得なのか、について考えてみようと思います。



建築を勉強してきた施主さんや、建てようと考えてる人には常識かと思います。
快適は、”高い”
工夫することで快適にはなるが、省コストとの両立は難しいんです。


今回のテーマははっきりしていて、損か得か。それに尽きます。
冬の日光を入れれば、暖房費は下がるのか。
窓の設置代金と、節約できる暖房費を比較することで、得か損かを判断したいと思います。
この点にのみ絞って考えます。
窓を大きく開ければ明るくて気持ちがいいとか、そういった副次的な効果は考えません。




※注意

今回の話は実在する特定の団体や考え方に対し、批判や問題提起をしようとしているわけではありません。素人が思い付きで考えてみただけです。予めご了承ください。



■パッシブデザインの大原則


1.冬の光は積極的に欲しいが、夏の光は遮るべし
暖房費は削減したいし、冷房費は上がると困るからです。


2.南は大きく開けるが、他の方位の窓は小さくする
東西の窓は、夏場に光が入るし、北側の窓からは光が入りにくいからですね。開口するのであれば、外部で光を遮断できる「すだれ」「アウターシェード」が必要。


3.日射取得の効率を考えるなら、透過率を優先すること
ガラスはそれぞれ種類によって光を通す効率が異なるため、光を多く入れるのであれば透過率の高いものを使うほうが「より得」になる。


4.トリプルガラスよりも、ペアガラスを使うほうが日射取得ができる
3.の透過率と同じ考えですが、ガラスの枚数が少ないほうが、より光が入るという考え方です。


5.夜間は光が入らないので、ハニカムスクリーンを下げて熱を逃がさない
熱取得ができない時間帯は、逆に熱を逃がさないように断熱を意識します。


6.蓄熱効果がある素材を壁や床に入れるとより効果的です
夜間に熱を持ち越すには、光でゆっくり温まった壁や床が効果的ですね。



■サンプルハウス条件


それではいつも通り30坪サンプルハウスに登場してもらいましょう。何度も登場させていますので、今回は図面を設計しています。(再登場あるかもです)


30坪サンプルハウス 1F


30坪サンプルハウス2F


間取りは適当に作っていますので、「だっさ!」とか「誰が住むねん」などのツッコミは無しでお願いします。チキンハートなので凹みます。


今回は2階のみを計算として考えます。
窓は次のように設定しています。
なお、窓のサイズは実寸ではなく、切り捨ての簡略計算とします。



■窓の設定を準備する


南窓 合計面積 4.3㎡
吹き抜け 11913 1100×1300=1.43㎡ 2枚 2.86㎡
洋室   16009 1600×900=1.44㎡


東窓 合計面積 2.5㎡
トイレ 06907 600×700㎜ 0.42㎡ 1枚
階段  16913 1600×1300 2.08㎡ 1枚


西窓  合計面積 0.84㎡
洋室  06907 600×700㎜ 0.42㎡ 2枚



家の壁面積は東西・南北とも8マス7280㎜×高さ2500㎜で計算します。
各面の壁面積は18.2㎡となりますので 


南窓開口率 23.6%
東窓開口率 13.7%
西窓開口率   4.6%
数値はこのようになります。パッシブデザインっぽくなってますかね?


窓は比較するために4種類用意します。
APW430から3種類、APW330から1種類です。


こうやって並べてみると、色々見えてくるものがありますね。
APW330の優位性が高くないようにも感じますが、APW430はまだまだ値段が張ります(2021年現在)から、比較対象に入れて計算続けますね。



■全国の気温と日照のデータ


断熱の区分は令和3年(2021)から8区分になるみたいですね。
せっかくなので全国から地域を適当に選んで、地域ごとの違いを見てみましょう。


必要なデータは冬1月2月の平均気温、最高気温、最低気温、日照時間の4つです。
一番寒い時期の気温差を選ぶことにします。


北海道   稚内市、函館市
東北    秋田市、宮城・仙台市
北陸    新潟・十日市市、福井市
関東    栃木・宇都宮市、埼玉・さいたま市、神奈川・三浦市
中部東海 長野・諏訪市、静岡・浜松市
近畿    滋賀・米原市、大阪市、和歌山・串本町
中国    島根・松江市、岡山・津山市、広島市
四国    香川・高松市、高知・宿毛市
九州沖縄 福岡市、熊本・高森町、宮崎市、石垣市


全部で23か所の冬の気候を並べてみます。
場所の選定は、気象庁のデータがあるうちから日照が違いそうなところを選びました。
あとは私の好みです。自分の地方がない、って人は自分で数値を探してみてください。


観測地点のイメージ図

※Google mapを使用して作成しています


23か所の気象データ


こうやって表にすると、地域ごとの違いが見えて面白いですね。


特徴ごとに、まとめて平均値を取ったところ、やはり地域ごとに日照の良し悪しの傾向がありました。
太平洋側の気候の土地が、冬に晴れて日照が望めるようです。


そして沖縄県。冬も暖かいので日照もいいのだろうと思っていましたが意外です。
1月2月は曇天が多いみたいですね。沖縄本島や他の地点でも日照時間は100時間以内でした。


結論としては、1月と2月の比較では総じて1月のほうが寒い、ということで良さそうです。2月のほうが寒いと思い込んでいた私ですが、先入観って怖いですね。
ということで、データとしては1月を使って話を進めていきたいと思います。



■各地の日照の強さを計算する


最初は大阪で出した数値をもとに、係数を作って各地の数値を近似的に出す。
言ってみたら手抜きなんですが、これはダメでした。なんと誤差が2割。
数値を皆さんに見てもらうのに、これではだめだということで23か所すべて、1月20日のデータをもとにすべて算出します。



以前も紹介した、太陽の動きを出してくれるサイトです。
こちらに各市庁舎の位置を入力して、緯度経度から太陽の動きを出してもらいます。
15分刻みの日の出日の入りから各地域の日照時間を計算。
このあたりは前回と同じ手順です。


次に15分ごとに出ている太陽高度を使って、日照の理論値を算出。
式は以前のブログで書いた、この式を利用します。



太陽定数をS、太陽高度をX、エネルギー量をsとすると
s=S×sin(X)


この数字に、南窓から入る窓の係数を掛けてやります。
この季節は南中高度が低いので、緯度の高い地域は100%。
緯度の低い地域でも、正午当たりに数%程度減少するくらいです。


※数値修正のためグラフを差し替えました(2021/2/20変更)



こちらは串本町の予想グラフですが、青線の部分が南窓、橙が東西窓の取得予想値です。
凸凹しているのが、我ながら美しくないと感じます。


これで各地の1日の日照理論値が出ました。



南中時の太陽の強さをイメージするのに、グラフにしてみました。


北と南でかなり違いますね。



最後に、日照時間です。それぞれの地域の日照時間は9時間から11時間。30.4日を掛け、その地域の月の理論日照時間を出します。
各都市の気象庁の1月の平均日照時間と、この理論日照時間の割合を算出します。


気象庁の各地日照時間 ÷ 各地の理論日照 = X%(日照係数)


言葉だけではわかりにくいので、表をご覧ください。


※数値修正のため、グラフを差し替えています(2021/2/20変更)


本来は、同じ1月でも毎日南中角度は高くなっていきますので、一律同じ数字で計算するのは誤差が出るので望ましくないです。
ただ、この計算は「あくまでもイメージをつかむ計算」なので、
問題ナシ! とします。



最後に各地の日射取得の数値に、方角係数と日射係数を掛けてやります。
これで晴れや曇り、悪天候といった天気の変化の平均値にリアルに近づけるのではないでしょうか。


※数値修正のため、グラフを差し替えています(2021/2/20変更)



1,000W/㎡・1日以下を青色、1,000~2,000Wを緑色、2,000~3,000Wを黄色に色分けしました。
見た感じ北国はやはり弱いですが、仙台で2000W。健闘しています。


日本海側の気候はやはり厳しいようです。
また、関東以西は福井・島根県(日本海側)を除き、日射取得の効率は比較的良さそうです。
というか、日照係数の数値は影響大きいです。
石垣市は緯度が低いため太陽光は強いはずなのですが、係数が半分なので仙台市よりも低い数値となっています。


以上で、下準備編は終了です。
次回は、いよいよ気温差から見る損か得かの計算に入りたいと思います。

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