家建てます!ブログ

滋賀県で高気密、高断熱の家を建てる記録。

【オット小話】 施主として考えたこと ⑪ なんちゃってパッシブ


ぶっ続きで、太陽の話しか書いていない自分にビックリです。
皆さん、興味を持ってもらえてるのでしょうか。
わからないですけど、今回で日光の話もおしまいです。
いよいよ総まとめ。


■なんちゃってパッシブを達成するには
パッシブデザインの本家は厳しい条件を満たさないと認可が下りませんが、こちらは所詮素人の考える「なんちゃって」です。ゆるーくいきましょう。計算はゆるくはないですが


1.断熱は出来るだけがんばる。UA値0.5以下にできたらいいな。
2.東西、北の窓は小さめに。だけど見たい風景があるならドーンと開けよう。
3.南の2階から光を入れて、冬に備えよう。厳しかったら、東側でも可。


こんな感じでどうでしょうか。


パッシブデザインの難しいところは、どこか。
答え:「広い敷地がいる」こと。
正確には、南側の隣家との間にスペースが必要になるのがネックなのです。
図で表してみます。




例によってエクセルで雑に作った図です。
40坪ほどのイメージの家で、庭は南に7mほど取り、隣家とのスペースは8.3mという設定です。自宅の庇はパッシブデザインを意識して1m伸ばしています。


1階に冬至の光が差し込んではいますが、隣家の庇によって若干削られています。
紫色の帯が、光が遮られた部分ですね。
サイズを測ったところ、本来1.67mの光が入るところが1mの幅となっています。
ということは40%が陰になっていますね。
一階に冬至の光を完全に入れるには、自宅をもっと左(北側)にずらす必要があります。
床上0.6m、隣家庇を6mとして、角度が31度の場合、底辺5.4mとなりますので8987㎜、隣家との距離を、9mとる必要があります。


では土地の広さを考えてみましょう。建物が8m四方とすると、北側に1m東側に1m、駐車場を作るなら西側に3mくらい余地が必要。南面を駐車場にできるのは稀かと。
南北が1+8+9m=18m。東西が1+8+3=12m。計216㎡=65.3坪ですね。
坪20万くらいに抑えないと、土地代だけでエライことになりそうです。
やはりパッシブはお金に余裕がある人の(以下略)


ということで、土地が高い、または狭い土地しか手に入らない場所でのパッシブデザインは
「二階南面からの採光+吹き抜け」
にするのが現実的ではないかと考えられます。


同じ条件で隣家との距離が4m、2mの場合を図にしてみます。


幅4mのプランです。


隣家との間隔が詰まると、1mの庇は逆効果です。50㎝に縮めています。
1階は50度以下になると隣家の庇が遮って入りません。
ただし、逆に夏は70度くらいまで差し込みますので、遮光優先なら1mもありかと思います。
2階の窓は22~55度くらいで差し込むかと思われます。秋分から冬至、春分まで入射と考えるとこの位でいいのではないでしょうか。光の太さも90㎝あります。窓を大きくしても入射は問題なく入ってくると考えられます。




幅2mのプランです。


1階は70度の角度でも隣家の庇が邪魔して入ってきません。
採光は2階からと割り切って、1階窓を無くすプランもありだと思います。
窓1㎡施工単価は5万円~ですから。


2階のほうは隣の家の庇や屋根でずいぶん窮屈ですが、何とか採光は確保できました。
ただし、光の太さが31度で45㎝。40度で72㎝とやや物足りません。
窓を横長に広げるか、隣家との距離を3mくらいまで広げると、もう少し余裕ある採光ができるかと思います。



■庇で気を付けるべきこと


さて、採光に気を付けるべく、図面を引いて、角度を測ってとやっていると
「なんだかプロっぽいやん?」という気になりませんでしたか? 
私はなりました。



しかし、大きな落とし穴があります。


それは
先ほどの上の図は真南の、正午の光しか見ていない
それが問題なのです。



問題その1
Q.土地と建物の方位が真北とズレていたらどうするの?
A.祈れ。


これは冗談としても、計測が複雑になります。
補正値を計算で出して、ということは思いつきますが、個人的に手計算でする気にはなれませんし、間違いが増えそうな気がします。
最初から誤差ありきで、あえて無視するのもありかと。
または設計士に丸投げしちゃうとか。



問題その2
Q.午前11時、または午後2時の光は南の窓からどう入るの?
A.南中よりも低い角度で入るので、庇効果が薄れる。


例として大阪の7/20の太陽の位置と高さの表を見てください。


夏の太陽は9時には50度の角度まで登っています。暑さは想像通り、上から叩きつけるような光が想像できますね。


方角については次の表をご覧ください。


南南東、南、南南西の3区分を一緒にした、最も暑いと思われる南のエリアを
太陽は15分5マス、つまりたった1時間15分で駆け抜けてしまいます。
そのかわり、昇る際と降りる際はゆっくり、2時間ずつかけていますね。


ところがパッシブデザインで紹介される「庇で日射を遮るのです」という図を見ても。


「※1時間15分のみ適用。」
このような注意書きはどこにもありません。



さて、問題となる合計4時間以上ある、東南、南西の斜めからくる光。
この角度ですが、南中時よりも低く差し込んできます。
例の7/20だと、その角度は55度から70度なのですが、8月後半はもっと低い。


これが意味するのは隣の家の庇は遮蔽物としては物足りない」
そして、「東西の庇は夏の日差しにはあまり意味がない」



隣家の庇がちょうど一階の夏の遮蔽に都合いいかと思っていた私からのアドバイスです。
方位が45度変化すると、直角三角形の定理、1対1対√2、つまり庇との距離が1.4倍に離れます。
ということは窓との角度も変化して、晩春(5月後半)/晩夏(9月前半)の日光が強烈に差し込むことになる、というわけです。


参考に早見表を作ってみました。
こちらのモデル住宅の窓を参考に、表を作っています。



こちらが角度ごとの早見表になります。※サンプルは、家の中央付近の窓で計算。


条件①:窓上端の角度よりも太陽の角度が大きく ※1
条件②:窓下端の角度よりも太陽の角度が小さい
※1 隣家有を想定。隣家が離れていれば表示角度より小さくても日光は入ります



この二つの条件の範囲内で、太陽光が部屋の中に差し込むはずです。
西側からの光は窓の取り付け位置によって大きく変化します。
切妻なら妻側、軒側でも庇の距離が違ってきます。
窓のサイズ、方角、数値が違えば「すべて変化します」ので参考程度にどうぞ。


さらっと書きましたがこの式、三角関数が方角が変わるたびに多重に変化します。
立体空間の把握が苦手なら、算数だってもともと好きじゃない私は、文字通り何度も頭から煙出しながらエクセルに関数組み込みました。
サインコサインとか、本当もう勘弁ですわ。。。



この例の600㎜の庇だと夏の最中7/20は、ほぼカバーできるようです。
ただし、9月頭くらいになると西南方向から暑い光がやってきます(確定)


さて、サンプルは二階なのでまだ庇が効果的です。
けれど南方面の一階に窓を設置する場合
入射角は各方位(最低でも45度刻みで)慎重に計算しないと
クソ暑い部屋で嘆く羽目になります。



計算式とかそんなの分からないよ、どうすればいいの?


そんな人は図面を実際に測ってみればいいのです。
皆さんの手元には、サイズをきちんと図った1/50とか1/100の図面が当然ありますよね。


前回の記事 ■施主が建築依頼前にすべきことで書きましたように、とにかく測りまくって、サイズを縮尺に従って記入した、周辺家屋と建築予定図の設計図。
ここでアレがついに役立つのです。


計算する方法


0.設計図を準備する




1、光の入り方を知りたい窓の真ん中に定規を当てる。



2.知りたい光の方角に定規を向けて、庇の予定線までの長さを測る
  この例では225°(南西)
3.長さに縮尺を掛けて、実際の数値を得る(長さAと定義)




4.窓の上端、窓の下端と、庇の先端までの高さ差をメモする(窓B、窓Cと定義)



5.長さAと窓B、長さAと窓Cの各々の斜辺を求める
長さAと窓B、この二辺の斜辺を斜辺Bと定義 
(長さAの二乗+窓Bの二乗)の平方根 = 斜辺B
同様にして、斜辺Cを求める




6.長さA(底辺)、斜辺Bの二つの数字から角度を求める
コサインを使えば出ます。式を書くの面倒ですから
親切な私はこちらのサイトを紹介することにします(他力本願)




出た角度が、庇から窓上端に差し込む光の角度になります。


7.長さA、斜辺Cの二つの数字から角度を求める
先ほどと同じです。
出た角度は庇の先端から窓下端に差し込む光の角度となります。


8.光の方角を変えて同じように計算をする
9.隣家の庇で、同じ計算を(以下略)
10.すべての南面の窓で(略)
11.ほかの面の窓も(ry




ね、簡単でしょ?(血涙)




というか、ぶっちゃけ言いますけど、冬の日射取得と、夏の日射遮蔽
大事なのはどちらなんでしょう。


5月半ばから10月半ばまでの5か月、強烈な日差しの押し売りが来る。
12月から3月の4か月、落ちてくる太陽光を集めて、得する。


というか「押し売り」、って響きやばくね?
南の日射取得、遮蔽簡単な2階だけでいいんじゃね? 
私はこう考えました。


「いや、1階の南に窓付けても、アウターシェードスダレつければ大丈夫です。」
そう言うかもしれませんね、パッシブデザイン勧める設計さんなら。
ても、すぐに飛びついてはいけません。


アウターシェード設置はひと窓5~10万近くします。
これ設計士ではなくて、施主が払うんですよ。当然。
気軽に言いよりますからね、彼ら
シェードの寿命、多分10年ほどよ? 交換しなあかんのワイでっせ?
夏の間、窓のアウターシェード、朝晩上げ下ろしできます? 面倒じゃないですか?


他にも防犯にシャッターはどうする、とかスダレを季節ごとに付け外しするのか、とか悩みは尽きません。


南だけではなく、東西の窓も慎重に考える必要があります。
昼を過ぎればマシになる東はまだしも、西に玄関や大きい窓を設けると後々生活上の大きな後悔の種になりそうです。夏なんて夜まで熱残りますからね。


こういった「思ってたのと違う」、というのを防ぐには



こんな感じのソフトでシミュレーションするのが、まあ本流ですよね。ですが高い!
施主が買って自分でするのは、少しあたまわるいかと思いますが、のちのち後悔しないためには一つの選択肢としてありかもしれません。



■自分の家の土地の特性


最後に一つだけ。シミュレーションソフトとか、専門家ならばっちり。
そう言い切りたいんですが、我が家の設計をお願いした戸井田さん、設計士の方の一言を紹介しましょう。


「隣家とかの建築物は大丈夫なんですけど、山とかの設定はないですからねー」


そう、我が家は滋賀県西部で、京都との県境の山が日照を遮るんです。
冬ならば計算上、午後2:45には山の向こうに太陽が。
夏の日が高い時ですら、午後4時~5時過ぎにはおさらばなのです。
やったー、西日知らずやん、と言いたいんですが、これによって南の採光は数十パーセントが得られなくなります。
そんな経緯で我が家は「なんちゃってパッシブ」となりました。



計算するには


このあたりで自宅の標高を確かめ、山頂や、高い建物などの陰になりそうな地点の標高と距離で、三角法から角度を算出。
自宅からの障害がある方位を確認し、この時刻には太陽はX度以下なので障害物の向こうに隠れる。そんな計算が必要になります。
ですがこの程度、庇の入射角を計算した皆さんにはあくびが出るくらい簡単な作業だと思いますので、説明は割愛します。


この遠方の障害と、自宅の庇、隣家の庇が太陽を遮る3大要因です。
皆さんも計算をして「なんちゃってパッシブ」を目指してみてはいかがでしょうか!


今回で終わり、とか言ってましたが、まだ書き残しがありました。
次回以降、周囲の環境と、冬の日射取得について書かせてください。

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