【オット小話】 賃貸と持ち家はどっちが得か 前編
なんか、このタイトルでしょっちゅうあちこちで皆さんネタにしてる気がするんです。
私もその人気にあやかって、ひとつ考えてみようと思います。
■大家は儲かるにきまってるだろ
まず、大胆に結論から言います。
賃貸が儲からんかったら、誰も賃貸なんてやれへんで。
ヒントはここにあると思ってください。
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持ち家で、損するかもって理由で言われるのが
・固定資産税
・修繕費
・災害などの大規模修繕
・転勤リスク
このあたりがあるんで一概には言えませんね。
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このようにぬるっと結論避けてるサイトが多い気がするんです。
わたしは、あえて言いきってみます。
”持ち家のほうが得に決まってるやん”
ただし、以下の条件を守れるなら(これ大事)
・初期費用はとにかく抑える
・最低20年以上連続して住むこと
・長期のランニングコストを意識すること
・メンテコストを最小にすること
・贅沢な設備を減らすこと
・ローンは少ないほうが有利
持ち家を買う、ということは、
自分が自分に「大家として家を貸す」こと
この意識、というか切り離しができない人が多い気がします。
分かりづらいかもしれないので、説明するのにちょっと話を変えます。
■自分の役割を切り離して考える
私は自営業ですので、自営業を例にしての説明をさせてください。
あまり一般的でないので、自営業はピンとこない人が多いかと思いますが
多くの自営業って、「一人会社」なんですよ。
※会社、と言いましたが、もちろん会社化していない人が多いです。
- 客先を回って仕事を取り(営業)
- 宣伝広告を考え(広告)
- デザインをし(設計)
- 注文の製作をし(実務)
- 納品物を得意先に運び(流通)
- 領収書を計算し(経理)
- 納税を終え(税務)
- 人を雇い(人事)
- 新製品を開発し(開発)
- ビジネスの方向や借り入れを決断する(取締役)
普通の会社なら何十人もの分業に支えられて、他の部門に仕事を手渡すところを一人で全部やっちゃうのがフリーランスだったり自営業だったりします。
だから、営業(自分)が無理な案件を取ってきて、
現場(自分)がボヤキながら仕事をして
社長(自分)は売上が上がったと喜ぶ。
シュールですよね。
喜んでるんかボヤいてるんかはっきりしろと言いたくなります。
このイメージなんです。
「自分」がお金を借りて大家になって、店子(自分)に借りてもらう。
借り手に喜んでもらうために、立派な家にするのは当たり前です。
でも、大家は慈善事業ではないんです。
ここの意識が皆さん抜け落ちてるように思います。
■プロの行動とアマチュアの行動の違い
賃貸で儲けようと思ったら、プロの貸し手は次の手を使います。
・空き部屋にしないよう、初期値引きをする(三か月無料とか)
・契約で中途解約はペナルティがあるようにする。
・質を落とした建材や素材を使う。ただし目につくところは豪華にする。
・新築時の家賃は強気で高く設定する。
・長く居続ける住まい手は、あえて高い家賃を払ってもらって
値下げしない。
・メンテナンスは最低限で。
業者を厳選して、安い信頼できるところに依頼。
・古い住宅はリノベチャンス。安く買って高く住んでもらう。
一方、持ち家にする人はっていうと
・転勤で引っ越して空き家に(買ったら異動コース)
・質のいい建材を使って、さらに表面も豪華に。
・でも月のローン支払いは「今の賃貸よりも安くしたい」
・メンテナンスはわからないから
「広告している大手」「建ててもらったメーカー」
・古い中古とかよりも、自分たちで建てる「新しいうちがいい」
何もかも真逆ですよね。
■リアルな家賃を考えてみる
いつものようにサンプルを作るのに、ざっくりした計算をします。
イメージは関西圏の中都市、駅15分くらいに新築を建てる計画です。
土地2,000万円 坪50万×40坪
建物坪単価70万円×30坪=2,100万円
諸経費600万円
合計4,700万円
資金内訳 借入額4,300万 自己資金400万
このケースだと、今後の支払いはどのくらいになるか適当予測してみます。
35フラットで借りるとして
ローン固定金利1.45% ボーナス返済無し
35年返済 毎月返済額15.5万 総額5,394万円
ローン金利総額=1,094万円
月に15.5万か。厳しいけど行ける!
普通の人は、ここで考えがストップ。
今の賃貸にちょっと乗せるくらいだ。いける!
借りるだけだった人は、そう考えちゃうのは仕方がない。
借りる側の人のイメージ
家賃はローンの返済額のみ。月15万5千円。
■大家の思考をトレースする
でもこれからあなたは大家になるのです。
それなら更なる費用を予想しなければいけません。
その他ランニングコスト(35年分)
・固定資産税 年12万と仮定 12万×35年=420万
・内部設備更新費用 12年ごと 120万×3回 360万
・外壁/配管/屋根 12年ごと 100万×3回 300万
・火災保険 5年で20万 20万×7回 140万
・その他突発災害修繕 300万
小計 1,520万円
上記資金の借り入れ
1,520万円 10年まで1.8%、以降2.3% 事業資金のため金利は割高
金利35年で、金利630万円
35年で必要な資金総額
初期建築時 4,700万円
家ローン金利 1,100万円
ランニング 1,520万円
他借入金利 630万円
小計7,950万円
銀行から借り入れをして、賃貸に回す場合このような事業計画になるはずです。
(おっと、あくまでもテキトーなので、本職の人はいじめないでくださいね)
ではここから家賃をどうやって決めるかです。
ここで回収期間の話になります。
20年なら7,950÷20、35年なら7,950÷35。年数で割ってみます。
10年なら。795万÷12 月割り66.2万円。
20年で年397.5万。 月割りで33.1万円
35年で年227.1万。 月割りで18.9万円
なんとなく、新築が高いカラクリが見えてきましたか?
はやく元を取って、利益が出るようにしたいんですね。
減価償却といって、税金上の話では木造は22年で価値0円と見なすルールがあったり、200%定率法といって、年度が若いうちにガッツリ経費として計上する話があるのですが、面倒なので興味ある方は自分で勉強してみてください。
私が大家だとしたら、18年くらいで回収したいですね。
都会のほうなら22~25年でもいいですが、そのころにはお迎えが近いでしょうから笑
となると、7,950÷18 = 年441.6万円 = 月36.8万円
えらいこっちゃです。誰が住むんだ?
しょうがないので年間に少しだけ利益を乗せて、35年間貸し付けるプランを作ってみましょう。手数料は秋ほどの7,950万円にたった15%(35年で!)の1,192万だけ乗せましょう。
これだと大家の取り分は年34.1万円。月に28,400円。
2万8千円? 高い!
そう思った人は、まだまだ借り手の気分が抜けてないです。
地震が来れば潰れ、火事で燃えるかもしれない8,000万円の物件を人に貸して
月に貰えるのがたった2.8万円ですよ?
年0.4%の金利とか、あなただったら喜びますか?
なかなか意識を切り替えるのは難しいものです。
7,950万(建設+ランニングコスト))+1,192万(利益)=9,142万、
切りよく9,150万。これを35年で割ると
9,150÷35 年261万円 =月21.8万円
大家の考える家賃設定
月当たり21.8万円
このあたりが甘めにした賃貸の家賃設定でしょうか。
■新築を借りると高いんです
30坪で21.8万円。これは、新築から35年目までの通期の平均家賃です。
30年を超えれば古びてくるので家賃を15万円に下げるとします。
そうなると新築時には25万~28万円で貸さないと、35年通期の帳尻合わせが難しそうですね。
賃貸の値段設定は、だいたいこんな流れで行われるのでは、と想像します。
大家の家賃イメージ
新築~5年目 28万円
6~25年目 20万円
25~35年目 15万円
さて、あなたが建てようとしているその家
誰かに28万で貸せる自信ってありますか?
というか、あなたは28万円で住んで文句はないですか?
いやいや、新築ってだけでそんなにしないでしょう?
そう思ったあなたに更なる現実をお見せします。
■マンション VS 戸建ての賃貸価格
賃貸価格ですが、利便性の高い土地のマンションの70㎡と、
やや離れた戸建ての100㎡は大体同じ価格帯になりやすいらしいです。
大阪の中心、北区の新築マンションに住むとどうなんでしょう。
調べてみました。
大阪市北区、環状線、新築マンションで70㎡以上
新築で27万円~38万円
3年以内に変更しても20万円以上という感じでした。
なるほど確かに、という家賃設定です。
自分の家の建築予定地を見て、28万以上で貸せる自信がないと思った方。
おそらく駅から遠すぎるか、
都会から離れすぎているか
高い金利で借りすぎているか、
設備をよくしすぎたか(多分これ)
土地を、家を広くしすぎたか(これもあやしい)
あるいはその全部が原因じゃないでしょうか。
ということは残念ながら「大家になって得ができるタイプ」ではない
ということになります。
■持ち家を買って損をするのはどうしてか
当たり前ですが、大家で儲けるというのは相当ハードルが高く、
専門知識がないと身ぐるみ剥がれる世界なんです。
家を建てるのにあたってのセールストーク。
今ある家賃よりも安い!ってうたい文句ですが
今回の計算で見てきたように
税金・保険 (まあ忘れない)
借入ローンの金利(把握してる)
ランニングコスト (ちょっと怪しい)
修繕コスト (忘れがち)
修繕資金借入金利(知らない)
大家の儲け(考えたことない)
このような計算を入れていないからですね。
家賃を比較する賃貸は、大体こんな感じだったのではないでしょうか?
計画した新築よりも確実に狭く、
設備はとても古いかしょぼい
場所はちょっと便利だけど
ずっと住みたいとは思えない
どうです? こんな感じではないでしょうか。
今の賃貸よりも安く住みたい。
それなら新築ではなく、中古物件のリノベがまだ近いです。
できるだけ安い物件を数百万くらいで買って、リフォームも200万くらいに抑え、ローンの借り入れもできるだけ低くすると、今の家賃よりもかなり抑えられるかと思います。
ですが、ブログの登録ジャンルがズレそうなので、この話はここまでにしておきます。
■今回の結論
賃貸と持ち家、どっちが得か、という話の時の注意
前提として、住む部屋のグレードをきちんと把握して揃える事
その上で試算した場合。
30坪の賃貸に35年住んだ場合、総支払予想額は7,950万円~10,000万円
自分でローンで購入した場合、総支払予想額は7,320万円
持ち家のほうが630万~2,680万円程、得する可能性が高い。
今回の結論となります。
今回の話で、「いや、そんな高い家、わし住まれへんやん」
そう思った人向けに次回は、今の賃貸と同じ家賃でグレードを上げた戸建てに住む方法を考えてみたいと思います。
できるかな?